豚は肉を与え、牛は乳を与え、烏は不快を、
鼠は病を我々に享受する家畜である。
そして帝守宮は我々に愛を享受する家畜である。
家畜は人に依存する、彼らは我々なしでは生きてはいけない。
ヤモリの思考は短絡的である。
食欲と性欲の二つである。しかし気をつけてほしい、
性欲と食欲ではなく食欲と性欲の順なのである。
私見だがヤモリは食べなくなったら、おしまいである。
ミカドヤモリ=ラコダクに対する過保護とは、
いかに彼らに我々の前で餌を食べさせるかということである。
その1
「三つ子の魂百まで、ラコダクはベビーから、コオロギはピンセットから」
爬虫類の給餌方法には2種類ある、前述の「ピンセット給餌」と「放虫」である。
後者は文字通りヤモリのいるケージに餌虫を放ち、
ヤモリにそれを捕食してもらうのに対し、
前者はピンセット、箸、指などで掴んだ餌(生死問わず)を摂取してもらうことである。
一見「放虫」の方が手間がかからず、
野生の王国、弱肉強食と自然の摂理に則ってそうだが、今一度言う「ミカドヤモリは家畜である」。
家畜は自然の摂理に則らなければならない必要は全くないのである。
少し汚いやり方でアンフェアなのだが、まず「放虫」の良くない点から列挙してみる。
●うまく逃げて捕食できない。
ずばりミカドヤモリは狩りがへたくそでコオロギなどの生き餌と
いつの間にか同居しているということがよくある。
なおかつ食欲のエクスタシーが最高潮に高まりすぎて
床材や糞を食べてしまうことがある。
●餌と思わなくなってくる
上記と関連するのだがミカドヤモリの愛のパワーがあまりに強大なのか、
はたまた単なる慣れなのか生き餌を餌として認識しなくなってしまう。
●死ぬ
生き餌がうまく逃げ仰せるとそのまま往生することがある。
哲学的には死は生と同様に尊いが、
この場合の「死」は「腐敗」と同義で不衛生の要因以外の何者でもない。
お呼びでないハエやダニも湧く。
●払う
最も爬虫類飼育者と非飼育者との認識にずれは給餌に現れると言っても過言ではないかもしれない。
爬虫類に餌を与える際のテクニックとしてガットローディングとダスティングというものがある。
人で考えると、とても分かりやすい。
栄養たっぷりのハーブで育てた地鶏を食べ
(ガットローディング=生き餌に栄養のあるものを摂らせ、
生き餌を食べさせることによってその栄養素を爬虫類に間接的に取らせる方法)、
適度な食事と共に足りない栄養素をサプリメント
(ダスティング=生き餌の表面にサプリメントをまぶし、
サプリメントごと生き餌を爬虫類に食べさせて栄養素を補わせる方法)で補う。
「放虫」するとガットローディングはともかく、
せっかくダスティングしたものが、食べないうちにすっかり払われて元の木阿弥、
元の黒コオロギになってしまうということが多々ある。
●悪さをする
生き餌とは基本的に昆虫である、彼らはヤモリ以上に本能の固まりである。
食べれるものは何であっても食べる、それは生への執着という本能そのものである。
そのためヤモリを襲い、重度のストレスに陥らせたり、
せっかく身を粉にしてメスヤモリが生んだ卵を食べてしまうことがある、悲しいね。
●複数のヤモリを一緒に飼えない
飼えないというのは、えらく乱暴な言い方だが、つまりこういうことである。
食欲おう盛なヤモリとそうでないヤモリを同ケージ内で飼育した場合、
「放虫」した生き餌は食欲おう盛なヤモリの方が多く捕食する。
至極真っ当な自然の摂理である。はじめは「捕らえ損ねた」なのだが、
次第にそれが「捕らえることができなくなってしまった」となり、
気がつくと野球のペナントレースのように膨大なゲーム差ができてしまい、
そうでないヤモリは最悪の場合衰弱してしまう。
もう一度言おう「私見だがヤモリは食べなくなったら、おしまいである。」
●どうでもよくなる
「放虫」の場合、ケージ内に餌を投げ入れることで完了してしまうため、
個体とコミュニケーションがとれなくなる。「ヤモリに餌をあげる」ということが希薄になり、
「餌を入れる」ということを遂行することが目的となってしまう可能性がある。
一応、「放虫」のメリットも書いておく。
○手間がかからない。
「ピンセット給餌」は「放虫」のデメリットと反対のことがメリットになると考えてよい。
○逃げない
基本的にピンセットで押さえているので逃げない、
さらに「過保護給餌」では生き餌を瀕死状態にするのでさらに逃げない。
確実にミカドヤモリたちの胃袋に納まる。
○食欲増進
ピンセットであげない限りケージ内に餌は存在しない。
そのため軽い絶食状態となり空腹中枢が刺激される。
ヤモリに空腹中枢があるのか知らないが、空腹中枢が刺激されていれば、
少しでも栄養を取り込もうと吸収力がアップするのではないかと思っている(思っているだけ)
○既に死んでいる
ピンセットの時点で瀕死であり、なおかつ確実に捕食されるので、
生き餌が猫のように飼い主に見つからないところでひっそり死んで、
腐って迷惑をかけるということはない。
○粉は付いたまま
過保護給餌では若干「料理」が必要な場合があり、
その際に結構ダスティングしたサプリメントが落ちることがあるのだが、
それでも「放虫」よりは断然付いたまま給餌できる。
○悪さをしない
というか既に死んでいる(死んだも同然)
○複数飼育しても愛情を持って管理できる
一匹づつ、いちいちピンセットからあげるので、
個体の性格による食欲の違いなどに左右されることなく
餌を一律に給餌でき、またその際、個体の状態がよく分かる。
健康にも関わらず食べない個体などは脱皮か産卵、
唇が変形していたらマウスロットかカルシウム不足の可能性など。
○どうでもよくはならない
一方通行ながら給餌は数少ない彼らとのコミュニケーションをとる手段の一つである。
ちょっと飽きてきても彼らのおいしそうにコオロギを食べてくれる姿を見ると、
自然と愛情が回復するというものである。
ピンセット給餌のデメリット
●手間がかかる
とにかく、個体につき一度の給餌で一回分(x匹)を与えなければならないため、
個体に長い時間を割かなければならない。
まさに異形のミカドにお仕えする、奴婢といったところである。
●ピンセットが刺さる?
食欲が増進しすぎてピンセットごとかぶりつく個体がいる。
いわゆるヤモリ釣りの状態である。
このときピンセットを開けばヤモリのあごに衝撃(ジャッキのように無理にこじ開けてしまう)を
与えてしまいかねないので、
しっかりピンセットを押さえて、咀嚼のために口を少し開けた瞬間に横に引っこ抜けば問題ない。
またピンセットの尖っている部分をヤモリと平行に持っていってやれば、刺さるということはない。
ただし異物が口の中に入ったことで食べるのをやめてしまう個体がいる。
ヘタレではあるが、次の機会にあげれば問題ない。
●のどをつめて吐く
ピンセット給餌は強制給餌のように次々とワンコソバのように与える。
食事が終わったと思わせないのがコツである。
食事した後のヤモリを観察してもらえば分かるのだが、
彼らは咀嚼したものを一旦のどに溜める。
そして、それを体全体をくねらせて(これがまた可愛い)胃袋に押しやるのである。
ところが、たまにくねらせる前に吐いてしまうことがある。
何らかの疾患で吐き戻すというよりは、物理的に量が多すぎたりして
吐いたといった方がしっくりくる。
口にものをいっぱい詰め込んだ時に咳き込んだといえば分かりやすい。
その場で吐いた時の対処方法は簡単である、一匹口から出てきたのなら、
また出たものをピンセットであげればいい、
彼らも不本意で吐いてしまったのか、すんなり食ってくれる。
二匹以上出たら一匹あげて後は捨てるか他の個体の餌にする。
こういう場合は量が多かったということで8分目に押さえてもらおう。
代謝が違うという問題は置いといて、人と同じように考えればいい。
一日分の食事のうち一食や二食抜いたとしてもすぐには死なない。
それと同じで、ヤモリも一回分の食事が前より少なかったとしても、
食べているのであれば次の給餌までに、前回の餌の量が少なかったことが原因で死ぬことはない。
因みに、なぜか食べてくれない時や吐き出す時は脱皮の可能性が大である。
(1)内蔵を露出させる
いわゆる拒食の治療で使われるテクニックであるが、
過保護給餌では、これを基本とする。私はこれを「料理」すると呼んでいる。
同じことなのだが、すなわち汁を出すためにコオロギのお尻をカットしたり、
ピンクの頭をピンセットで押しつぶしたり、
腹部をカットするのではなく、ヤモリに食べやすいように調理してあげるという感覚なのである。
ヤモリは汁気が大好きである。
比較的水切れに強い種が多いのは汁気の多い昆虫を好んで捕食し、
最低限の水分を確保する本能が働くからかもしれない、
確かに好物である蛾や蝶は花の蜜や樹液、水分しか吸えない口になっている。
ならば汁気が出る調理法で料理をしてやれば喜んで食すはずである、
その最もよい調理法とは「内蔵を露出させる」ことなのである。
(2)羽むしる、足取る、頭潰す
おいおい、過保護やな〜と馬鹿にされること請け合いであるが、
ミカドヤモリの中には硬いのが嫌いというとんでもない輩がいる、
そんな奴、正直不快そのものなのであるが、嫌いなんだから仕方がない。
コオロギの羽をむしり頭をピンセットで潰し足も全てとり、
もはや見るも無惨な状態にしたものを内蔵露出させると食べてくれる。その形状から私は「葉巻」と呼んでいる
しかし、効率的には成虫になる手前のムチムチの幼虫の頭潰して内蔵露出させた方がよい。
違いは分からないが、とにかく幼虫なのである。我々の感覚でいえばラムとマトンみたいなものか?
(3)京懐石コオロギ尽くし
おいおい、過保護やな〜と馬鹿にされること請け合いであるが(またかい!)、
ミカドヤモリの中には大きいのが嫌いというとんでもない輩がいる、
そんな奴、正直不快そのものなのであるが、嫌いなんだから仕方がない。
突然だが懐石料理は一品一品の量はわずかなのだが、
食べているうちに意外にお腹が膨れていくものである、
西洋料理のフルコースもそういう傾向がある。
(4)卵 is not 完全栄養食品
メスコオロギの内蔵を露出させると、卵が出てくる。
この卵、かなり曲者で消化されずにそのまま出てくる。
そして孵化する
しかも卵が口に付くのを嫌がる個体がいる。
無理矢理あげれば食べないこともないのだが、あまりに嫌がるなら、代わりに幼虫をあげる。
(5)断食
読んで字のごとくである、健康な個体の餌食いが落ちた場合は一回か二回餌を抜いてもいいかも知れない。
産卵や脱皮の兆候による食欲不振かも知れない。この辺りはある程度の経験が必要。